マンションを管理していると、思いがけないところでトラブルと出くわしてしまうこともあるでしょう。そういったトラブルの一つが、「水漏れ」です。
マンションで水漏れを起こしたり、マンションの居住者が何らかの被害を受けたりした際、どのように対処すべきかわからず、頭を抱えてしまう人も多いのではないでしょうか。マンションの管理者は、万が一の水漏れに備えて、原因を作った側と被害を受けた側でどのような対処を行うべきか理解しておく必要があります。
そこで今回は、マンションの水漏れの原因と対処法、さらに賠償金の支払いや備えるべき保険について詳しく解説します。
目次
1.水漏れの主な2つの原因
マンションの水漏れの原因は、「配管の老朽化」と「入居者の不注意」のどちらかである場合がほとんどです。2つの原因について知識を深めておけば、水漏れトラブルをできる限り防ぐことができるでしょう。
ここでは、具体例をあげながら、水漏れの原因について詳しく説明します。
1-1.老朽化による配管の故障
マンションの配管からの水漏れは、老朽化による劣化が原因で起こります。キッチンやトイレなど蛇口につながる給水管、キッチンや洗面化粧台につながる給湯管、お風呂やキッチンなどの水回りで使用した水が流れる排水管は、老朽化によって故障しやすい部分です。
トイレ・キッチン・洗面化粧台で起こりやすい給水管と排水管からの水漏れの原因は、配管に取り付けてあるパッキンが劣化しているケースが多くみられます。また、排水管に取り付けられているトラップ部分に物が詰まって水漏れが起こることもめずらしくありません。
給湯管からの水漏れの原因の1つに、銅管に小さな穴が開くピンホール漏水があります。給湯管に銅管を使用している場合、経年劣化が起こることを想定しておきましょう。
さらに、配管の接続不良が原因の場合、新築マンションでも床下配管から水漏れが起こることも十分に考えられます。
1-2.入居者の不注意
マンションの水漏れは、洗濯機の排水ホースの未装着など、入居者の不注意で起こることもあります。洗濯機の排水ホースが外れていると、水漏れに気がつくまで大量の水が流れ続けるため注意が必要です。
また、防水加工されているお風呂でも、お湯の出しっぱなしが原因で浴室から水があふれだし、部屋中水浸しになって階下に水漏れが起こることも考えられます。
さらに、トイレ詰まりで配管に負担がかかり、亀裂が生じて水漏れが起こるケースも少なくありません。トイレの床に水漏れがある場合も、マンションの階下に被害が及ぶ可能性が高いため、慌てずに止水栓を閉めて原因を探りましょう。
入居者の不注意によって起こる水漏れは、決してめずらしいことではありません。お風呂のお湯を出したまま眠ってしまったり、洗濯機の排水ホースが外れていることに気づかずに外出したり、不注意が招く水漏れは誰にでも起こり得ます。
2.マンションで水漏れした場合の対処法
マンションで水漏れが起こった場合、まずは原因の特定を専門業者に依頼することが大切です。当然のことながら、水漏れの被害を受けた場合と、水漏れを起こしてしまった場合とでは、対処法が異なります。
マンションの水漏れの原因と責任の所在をはっきりさせたうえで、今後の対処を検討しましょう。ここからは、水漏れを起こしてしまった場合と、水漏れ被害を受けた場合の対処法について解説します。
2-1.水漏れを起こしてしまった場合
マンションで水漏れを起こした場合の対応は、まず止水栓を閉めるなど、それ以上水が流れないようにすることが先決です。その後、トラブルを最小限にするためにも、各業者へ連絡を入れましょう。
マンションの水漏れが夜中に起こった場合でも、各業者はしっかり対応してくれるため、トラブルに気がついたらすぐに連絡することがポイントです。
<連絡が必要な業者と対応> | |
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水道業者 | 水漏れの原因調査と修理または工事 |
電気会社 | 漏電に備えた対応 |
水道業者や電気会社に連絡して水漏れの原因や解決策を探ることは重要です。またマンション居住者には、水漏れに気が付いた際はすぐに連絡を入れてもらうことで、階下や周辺住民への被害を最小限に抑えることができるでしょう。
さらに、水漏れが起こった場所が「専有部分」か「共有部分」かによっても、責任の所在が変わるため、2つの違いについても理解しておきましょう。
<専有部分と共有部分の違い> | |
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専有部分 | 共有部分 |
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トイレやキッチンなどの専有部分で水漏れが起こった場合、責任は入居者にあり、賃貸マンションであっても水漏れによる損害賠償金の支払いが必要です。
一方で、水漏れが共有部分で起こった場合は、管理会社側が損害を賠償することとなります。
マンションの水漏れで発生する賠償金額は、相手の被害内容によっては高額になることも考えられます。家電製品や家具などが使えなくなった場合は、購入代金の賠償を求められるケースが多いため、家財にかかる費用を賠償金額の目安と考えて良いでしょう。
水に濡れた衣類や室内は、クリーニング費用を請求されることもあります。
水漏れによる保険金請求を行う場合、水漏れの原因箇所の写真の添付を求められることがあります。水漏れが起こったら、状況の記録として忘れずに水漏れ箇所を撮影しておくことが重要です。
2-2.水漏れの被害を受けた場合
マンション室内の天井から水漏れ被害があった場合、原因と思しき上階の住人と直接話すことは避けたほうが良いでしょう。マンションの水漏れが起こると、すぐにお詫びに訪れる住人もいますが、賠償金の請求が必要になることも考えられるため、先行きが不透明な状況では、不用意に接触しないほうが無難です。
水漏れの被害がある場合、まずは水漏れの原因を調べましょう。前述したように、水漏れの箇所が所有者の専有部分であれば住人に対して、共有部分であれば管理会社に対して損害賠償を求められることとなります。
話し合いがスムーズに進まない場合は、加入している損害保険会社や弁護士に相談してみることも1つの方法です。
3.マンションの水漏れに備えた保険とは?
マンションの水漏れに備えた保険には、「個人賠償責任保険」があります。水回りに関するトラブル以外にも、子どもやペットが他人にけがをさせてしまったときや自転車での事故が起こったときにも補償される点が特徴です。
生命保険や自動車保険は保険料が高額になりがちですが、個人賠償責任保険は年間1,000円程度で加入できるタイプが多くみられます。保険の対象者の範囲が広く、加入者だけでなく、配偶者や同居している家族が起こしたトラブルにも、対応してくれる点は大きなメリットと言えるでしょう。
火災保険や損害保険のオプションとして加入できるケースも多く、現在利用している保険と絡めて加入を検討することができます。しかし、保険内容や条件によっては、補償の対象かどうかが変わるため、損害保険会社への確認が必須です。
補償範囲が専有部分だけなのか共有部分も含むのか、また、建物だけなのか家財も補償されるのかなど、保険の内容は事前にチェックしておく必要があります。
なかには、マンションの管理組合が加入する火災保険にオプションとして組み込まれていることもあるでしょう。マンションの配管が経年劣化によって水漏れした場合、保険適用外となることがありますが、管理組合が「水漏れ原因調査費用特約保険」に加入していれば保険適用となることもあります。
4.まとめ
マンションの水漏れは、「配管の老朽化」と「入居者の不注意」が原因となって起こることが多く、住民トラブルになることもめずらしくありません。マンションの水漏れは、時間が経てばそのぶん被害が大きくなるため、慌てることなくスムーズに対処できるように、加害者側と被害者側それぞれの対処方法を知っておくことが大切です。
また、個人賠償責任保険のような水漏れに対応できる保険に加入するなど、日頃からマンションの水漏れに備えておきましょう。