大規模修繕コンサルタントとは
大規模修繕コンサルタントの役割
大規模修繕コンサルタントはマンションの大規模修繕の際に、大規模修繕委員会の手助けを業務としています。マンションの大規模修繕は委員会を設立し、委員会が中心となって進めていくことは以前にも紹介させていただきました。
「面倒だ」「よくわからないから・・・」といって管理会社に任せたり、「見積もりとるのが大変だから・・・」といった理由で1社のみの見積もりで決めてしまった場合、必要以上の工事を施したり、競争原理が働かないため全体的に費用がかさんでしまうことがあります。
一例では、1回目の大規模修繕で修繕積立金を使ってしまい、2回目の修繕で足りなくなり補填するために一時金を10万単位で支払わなければならなかったという例もあります。
そうした事態に陥らないように大規模修繕コンサルタントは存在します。
大規模修繕コンサルタントのタイプ
大規模修繕のコンサルティング会社は主に3種類のタイプが存在します。
大規模修繕コンサルタント専門会社
大規模修繕工事を専門とするコンサルタント会社です。近年増加傾向にあります。建築業界から独立してコンサルタントに乗り出したケースや、現場で修繕業務を行っていた会社が分社し、子会社としてコンサル業務を担当するといったケースもあります。
大規模修繕のコンサルタント会社は専門性を生かし、マンション管理士や建築士などを抱えている割合が高いです。
管理会社
管理会社はマンション管理のプロですので、日常的なマンション管理業務だけでなく、大規模修繕のコンサルティングを行うことがあります。また、社内外に施工部門やコンサル部門を抱えている管理会社もあります。
日常的にマンションを管理しているため、マンションそれぞれの特徴を一番理解しているかもしれません。
一級建築士
一級建築士の資格を持った人が独立して大規模修繕にも対応できるコンサルタントとなる場合があります。新築の設計を手がけた建築士がそのままコンサルタントに入るというケースも存在します。
なお、大規模修繕コンサルタントの業務において建築士の資格は必要ありません。
大規模修繕コンサルタントの業務内容
調査・診断
大規模修繕コンサルタントに業務を依頼したときにまず行われる作業となります。
建物の診断は素人である大規模修繕委員会の人だけでは判断できません。というのも見えている場所だけでなく、建物内部も外部と同様に建物が建った瞬間に劣化が進んでいきます。それを完全に見抜くのはプロであっても難しいのです。
施工内容の決定など
建物の劣化状態をもとにして大規模修繕に向けて施工内容を決めていく作業になります。調査・診断結果を基にして現在の建物に必要な工事を検討していきます。
また、大規模修繕業界においては、見積もり書のフォーマットが確立していないため、施工会社によって見積もり書の内容がそれぞれ違っていたり、仕様が統一されずに比較しにくいという問題点があります。
施工会社の見積もりを比較しやすいように、仕様の統一や内容についての整理を行います。
そして修繕委員会とともに必要な工事と不必要な工事や過剰工事を見分ける作業にあたります。
工事の管理
工事の管理とは、工事現場に立会い「手抜き工事」がされないように監視することです。
善意・悪意問わずとも、仕様書と違った施工を行っていることもあります。
よくあるのが塗装の3回塗りを2回で済ませていたり、シーリングの打ち替えを打ち増しにするというものです。
このような不正や過失を見抜くために定期的に現場に足を運び、第三者として健全な工事が行われているかを監視することが、大規模修繕コンサルタントの一番の役割です。
アフター点検
共同の資産であるマンションにおいては長期修繕計画をしっかりと立てることが重要となります。
「長期修繕計画書」を建築会社が提出するよう決まっていますが、それに関しては目安であり、建物を取り巻く環境や実際に行った施工方法などによってズレが生じてきます。痛みやすい場所なども同じ建物を建てても全く同じとは限らないのです。
毎回修繕後に長期修繕計画を見直し、10年後、20年後にどのような修繕が必要で、費用はいくら確保しなければならないのかを分析し、修繕計画を更新していきます。
管理組合はそれを元に修繕積立金の調整を行い、次回の大規模修繕へと備えていきます。
※これらは例であり、サービス内容はコンサルタントによって異なります。
大規模修繕コンサルタントに依頼する時のポイント
施工会社の選定の場面でコンサルタントが大規模修繕の会社を名指しで紹介してきた場合は注意が必要です。
大規模修繕コンサルタントは善意の第三者として監視するため価値があるといえます。建設業界は癒着に代表される悪しき風習が今でも蔓延っている業界です。
大規模修繕における癒着の一番の怖いところは、コンサルタントや管理会社は修繕積立金がいくらあるかといった内部的なことまでも把握しているため、見積もりをぎりぎりで提出することも可能なのです。
もちろん善意の第三者となれるコンサルタントであれば、修繕委員会だけではまかないきれない知識や手腕を発揮してくれると思います。善意と悪意を見極めるのが大変ではありますが重要となってきます。
今回は大規模修繕コンサルタントについて解説を加えてきましたが、大規模修繕コンサルタントを入れることをおすすめするわけではありません。
大規模修繕は多額の費用と根気が必要な工事ですので、皆様の大規模修繕が満足いくものになるのであれば、信頼できるコンサルタントを入れてみるのも一つの手段かもしれません。