資格で見る大規模修繕。塗装技能士とは?

今回は大規模修繕の中で重要な役割を果たす塗装についてご紹介します。

塗装を行う塗装業者には様々な会社がありますが、みなさんはどういう印象をお持ちでしょうか。

中には、「対応が不親切だ」などと、あまり良い印象をお持ちじゃない方もいらっしゃるかもしれません。

それもそのはず、塗装業を営むにあたり、特別な資格や許可は必要とされません。ですから、対応が塗装業者よって異なるというのも事実です。

しかし、塗装業にもれっきとした国家資格があることをみなさんはご存知ですか。

それが「塗装技能士」です。この資格、一級ともなると合格率は50%という難易度の高い資格です。

大規模修繕において塗装は非常に重要です。失敗しないためも、施工会社は慎重に選定したいところ。施工実績だけにとらわれず、資格を持つ技術者が対応してくれる会社であるか、確認してみるのもいいかもしれません。

 

塗装技能士とは

ここで少しだけ、塗装技能士についてご紹介します。塗装技能士は技能検定の一種で、都道府県職業能力開発協会が実施する国家資格です。

一級塗装技能士が厚生労働大臣の認定資格であるのに対し、二級塗装技能士は都道府県知事の認定資格となります。一級になると難易度が上がるのはこのためです。

試験には塗装に関する知識や実技含まれます。内容は「木工塗装」「建築塗装」「金属塗装作業」「噴霧塗装作業」「鋼橋塗装作業」の5項目で、受験資格として実務経験が求められるため、一級でしたら7年以上塗装の経験が必要とされます。

 

受験資格一覧

三級塗装技能士・・・実務経験6ヶ月以上

二級塗装技能士・・・実務経験2年以上

一級塗装技能士・・・実務経験7年以上二級取得から2年以上

 

塗装技能士の資格を取得するためには、実技試験と学科試験の両方に合格する必要があります。

合格基準は100点満点中、実技60点以上、学科65点以上が原則とされています。

「建築塗装作業」の対象は、建築物の内装や外装を塗装するのに必要な技能・知識です。内容としては、素地調整、養生、下地材の調合・下地付け、目地処理、目止め材の調合・目止め、塗料の調合・色合わせ、下塗り、中塗り、研ぎ、仕上げ塗り、塗装機操作、塗り色判定等に関する技能・知識とあわせて、塗装一般、被塗装材、色彩、関係法規、安全衛生などに関する知識も含まれています。

 

特に一級は、技術が要求される特異な形状の被塗装物の養生、高度な色合わせ・塗りなど、高度な技能が求められます。ベテランの塗装職人であっても資格の取得が難しいとされ、合格率は50%程度と言われています。

難関といわれる塗装技能士の資格を取得するためには、経験豊富なベテラン職人でも、相応の学習を余儀なくされます。「お客さまから満足される仕事をしたい」「お客さまから信頼を得たい」という気持ちがなければ資格の取得は難しいのかもしれません。

 

試験内容

では、実際どんな試験を行うのかということですが、以下で簡単にご紹介します。

 

木工 

木材や合板に塗装をする作業です。刷毛やローラーブラシ、スプレーなどを材質に合わせて適宜対応できるかが問われる試験です。

また、学科試験では使用する道具に関する知識も必要です。

建築

大規模修繕にとって一番大切な分野になります。こちらの分野では比較的大きな建物の外観の仕上げや修理をします。建物の価値を維持するためには、定期的なメンテナンスが必要です。ただ塗るためだけでなく、メンテナンスという観点で物事を考える思考が問われます。

金属

金属分野の塗装は金属製品への塗装技術です。下地の知識が必要とされ、塗装部分以外を塗布しないように保護する作業も含みます。金属の塗装に関する知識は塗装の基礎と言える内容です。そのため、基本技術が多く組み込まれています。

 

噴霧

スプレーを使った塗装に関する内容が中心です。塗料を噴射するときの力の調整技術や、均一に塗装を行う技術が問われます。噴射するときの強さと勢いによって、塗料の濃さや付き方が変わります。

鋼橋

大規模な橋の塗装工事を行います。見た目の美しさはもちろん、地域の人が安心して橋を利用するためにも塗装の技術は大切です。正しい塗装をすることで、橋を雨風に強くすることができます。そういった応用技術が問われます。

 

 

実際のところは…

 

前述の通り、塗装業を営むために塗装技能士などの資格は必ずしも必要とはされていません。

それは、実務的な経験値が現場では優先されるためです。試験を行う場所は平らな場所ですが、マンションの大規模修繕などの場合、高所である上、足場のない場所での作業ですから環境は大きく異なります。

 

しかしながら、経験則を必要とされる塗装作業においても、しっかりとした資格を持った技術者がいるということは、施工会社選定の一つの目安となります。

「無資格=無技術」というわけではありませんが、判断基準のひとつとしてみてはいかがでしょうか。

みなさんの大規模修繕工事が成功することを願っています。