今回は大規模修繕の目的についてお話します。マンションに長期でお住まいの方なら誰もが耳にする大規模修繕ですが、実際は何が目的で行われているのでしょうか。
どんなマンションでも、建築物は必ず劣化していきます。建設当時はピカピカだったマンションでも、いずれは壁が剥がれたり、汚れが目立ってきたり、空調の効きがよくなかったり・・・という問題が出てきます。
鍵が壊れたり器具が故障したりという、突発的な補修は一般修繕と呼ばれる類のもので、単体の修繕が多く、比較的値段の安いものです。
それに対して、大規模修繕とは長期的な計画に基づき、大掛かりな修繕を行うもので、値段も張ります。代表的な工事の内容としては、外装の塗り替えや屋上の防水機能、階段やバルコニーなどの床の修繕があります。
大規模修繕が行われるようになった背景
「コンクリートの寿命は100年」と謳われている現在でも、マンションの寿命は一般的に60年~70年といわれています。
この結果は大規模修繕も大きく関わってきています。大規模修繕を行うことで、事前に補修することで、劣化に歯止めをかけているのです。人間の体で例えると、がん予防のようなものです。早期発見し、修繕することで、悪い部分が大きくなる前に取り除く仕組みになっています。
また、大規模修繕が一般的になったのはバブル崩壊後の日本の経済も関係しています。
高度経済成長期には建設ラッシュが相次ぎ「立てては壊し」を繰り返してきました。そして「より新しいもの」を求める傾向にありました。しかし、現在では当時と比べ、「古いものでも、少しでも早く直し、補うことで、長く使っていこう」という思考に変換していきました。
大規模修繕の矛盾
大規模修繕は、モノの大切にする現代社会においては、良いことのように思われます。
しかし、必ずしもそうではないのです。モノを大切にしているように聞こえていますが、一部においては「モノを粗末にしている」ことがその根拠です。
確かに定期的な修繕は必要で、壊れている部分を直すことは当たり前のことです。しかし、大規模修繕の名の下に、本当はまだ耐えられる部分も一緒に新しくしてしまうのです。
耐用年数は場所によってさまざまで、進捗の具合も「環境」によって変化が生じます。しかし、大きな足場を構築するような工事が行われるときに、直す必要のない部分まで、全て一緒に直してしまうというのが大規模修繕の裏側です。
修繕の目的
そもそも、全く壊れてないのに修繕の必要あるの?と疑問に思う方もいるかもしれません。大規模修繕の一番の目的は建物の寿命(使用価値)を延ばすことにあります。
使用価値には、物理的価値、社会的価値、経済的価値などがあり、大規模修繕が含まれるのは物理的価値の維持です。
修繕を行うことで、少しでもマンション自体の価値を維持することで、壊れにくく、居心地の良い住居を実現させようとしています。しかしながら、大規模に行う必要は必ずしもあるわけではありません。
もし修繕委員会に選ばれたなら、一度考えてみてください。その修繕、大規模で行う必要ありますか?