大規模修繕の要「防水工事」の内容を大公開!

こんにちわ。だんだん夏が近づいてきましたね。今回は大規模修繕の内容を解説する最後の項目です。

大規模修繕における防水工事とは?

防水before-after

 

大規模修繕の一番の目的は建物の防水性能を保持することにより、内部から傷むのを防ぐためなのは今までの記事でも解説してきました。

それを防ぐために下地を補修したり、シーリングを打ち直したり、上から塗装しなおすのです。そして今回は一番雨の被害を受ける「屋上の防水」に焦点をあてて解説をしていきたいと思います。

 

屋根の防水の種類

屋根の防水には大きく分けて3種類の方法があります。塗膜防水、シート防水、アスファルト防水の3種類です。それぞれの特徴について紹介していきたいと思います。

これらの方法で施工する箇所は主に、ベランダや通路、ルーフバルコニー、屋上、出窓がある場合は出窓のひさしです。

ベランダは主に塗膜防水のウレタンが使用されます。最近は長尺シートと呼ばれるシートを張ることが多いですが、長尺シートには防水効果はありません。

塗膜防水

塗膜防水とは防水の機能が付いている塗料を塗ることにより、時間の経過とともに衰えていった、塗装による防水機能を復活させる方法です。ウレタン塗料とFRP(ガラス繊維強化プラスチック)の2種類があります。塗膜防水は2~3層に重ねて塗るため、3.0mmに達するので、シート防水に比べて防水層が厚く仕上がります。

ウレタン塗料による防水

ウレタン防水は日本の屋上の防水方法の中で最も主流とされている工法です。ウレタン防水は液体状のウレタンを何層か重ねて塗ることにより、防水層を形成します。防水層を重ねることで雨の建物への侵入を防ぐ方法です。塗膜するウレタンは液体状なので、複雑な形をした屋根にも施工が可能であり、継ぎ目がないため継ぎ目からの雨水の浸入を防ぐことができます。

工法の違いについて

ウレタン防水工事の工法として「密着工法」と「絶縁工法」という2種類の工法が存在します。

密着工法はウレタンの防水材を直接施工します。対して絶縁工法では防水材と床の間に通気マットを設置する方法です。ベランダなど面積が小さい場所は密着工法を行うのが一般的となっています。

長所と短所をまとめてみました。

長所

・継ぎ目ができないため、そこからの雨水の浸入が防げる。

・工事の内容が比較的簡易なので工期が短くて済む。よって多大な人件費もかからず、材料自体も安いので結果として全体的な費用も安くなる。

・上から塗り重ねるので、古くなった防水材などを取り外す手間もかからず、撤去する費用もかからない。

短所

・比較的耐用年数が短い。

 

FRP(ガラス繊維強化プラスチック)防水

FRPとはガラス繊維強化プラスチックのことで、ガラス繊維などをプラスチックの中に含ませることにより、従来のプラスチックよりも強度を高めた複合材料のことです。

軽量であり、耐久性、侵食性、耐候性に優れている。人が歩く場所でも防水層の上をトップコートで仕上げるだけで人の歩行が可能になるほどの耐久性を持っています。近年では屋上の緑化や屋上菜園の防水層として注目を集めています。しかし、耐用年数が短いのがネックとなります。また、ウレタン防水と比べると材料費の関係で価格も高くなってしまいます。

長所と短所を比較してみます。

長所

・軽量でありつつ耐久性に優れている。

・乾くのが早く、工期が短い。

・施工完了後は人が歩いても問題がない。

短所

・施工時に異臭が発生するため、対策が必要。

・硬化後はプラスチックなので地震の揺れに弱い。

・再塗装の時に廃棄物がでる。

・伸縮性にかけるため、劣化した場合ひび割れがおこりやすい。

シート防水

シート防水は塗装防水のように塗るのではなく、防水シートを貼ることで雨水の浸入を防ぐ方法です。シート防水は塗装防水に比べると価格はさらに安く済ませることができます。しかし、耐用年数も長くはないです。液体状ではなくシート状の防水材のため、複雑な形状の屋根にはこちらの施工ができないことがあります。施工に使われるシートは主に2種類あります。

 

ベランダや通路などは長尺シートと呼ばれる装飾のあるシートを使うことがあります。

しかし、この長尺シート自体には防水性能はありませんのでご注意ください。

塩化ビニールシート防水

塩化ビニールシート防水は塩化ビニールの樹脂で作られた防水シートをプライマーで屋根に貼り付ける方法です。現在のシート防水の主流はこちらの塩化ビニールシート防水です。塩化ビニールシートの厚さは1.5mm~2.5mmとなっており、ゴムシート防水と比べると厚い防水層が出来上がります。

長所と短所の比較を行います。

長所

・施工後すぐに人の歩行も可能。

・紫外線や熱に比較的強い。

・物が置ける(塗料を塗布した床に物を置くと、表面が傷ついたり、物を持ち上げた際に塗装が剥がれる場合がある)。

・色が選べる。

・他の施工に比べて安い。

短所

・シートという形状なので、平らな屋根にしか利用できない。

・耐久年数が10~15年と比較的短い。

・シートの重なり部分に高い施工技術が要求されるため、施工不良が起こりやすい。

 

ゴムシート防水

ゴムシート防水は塩化ビニールシートと同じく、複雑な形状の屋根には向きません。こちらは素材の違いで、塩化ビニールではなく合成ゴムを使った防水シートを貼っていく工法です。ゴムシートの厚さは1.2mm~2.0mmなので防水層は塩化ビニールシートより薄い仕上がりとなります。最近の傾向としてはゴムシート防水の取り扱いは減少しています。

長所

・シートのため短期間で低コストの施工が可能となる。

・塩化ビニールと比べるとゴム素材のため、温度も影響を受けにくく地域の制限が少ない。

・耐久性は比較的高い。

・ゴムという材質上、伸縮性と柔軟性に長けているため、塩化ビニールに比べて地震の揺れに強いシートです。

短所

・シート状のため複雑な形状の屋根には向いていない。

・塩化ビニール防水に比べてシートが薄いので、外的損傷に弱い。

・プライマーの耐用年数が短いため、そこから雨水が浸入してしまうことがある。

・シートの重なり部分の施工技術は高いものが要求されるため、施工不良が起こりやすい。

アスファルト防水

アスファルト防水は防水材を塗るのと貼るのを両方行う工法です。

アスファルト防水とは合成繊維の不織布にアスファルトを含ませたシート状のルーフィングを貼り重ねて防水層を形成する工法です。ルーフィングを重ねることで、より水密性を持った防水層が作られます。より耐久性が高いため、価格も高くなってしまいます。

ルーフィングの上にコンクリートを塗ることでしっかりと防水することができます。しかし、どうしても重くなってしまうため、木造などの耐久力の低い建物には不向きです。

工法の違い

施工方法は2種類あります。

トーチ工法

こちらはトーチバーナーというガスバーナーのようなものを使う工法です。アスファルトルーフィングの裏面に含んでいるアスファルトをトーチバーナーであぶりながら溶かし、それをプライマーとし、塗るようにルーフィングを貼り付ける工法です。

長所

・トーチバーナーがあれば簡単に施工が可能。

・シート防水と比べると隙間なく溶接することが可能となるため、施工不良が少ない。

・従来の熱工法と比べて高い技術を必要としない。

短所

・アスファルト防水は価格が高い。

・トーチバーナーが熱を発するため、多少煙が出る。

・複雑な形状の屋根には施工ができない。

・重量があるので、木造住宅やアパートなどには向かない。

 

常温工法(冷工法)

常温工法は、熱に頼らずに溶接を行うため、「冷工法」とも呼ばれます。防水工事でアルファルトなどの溶融釜を利用して材料を溶かすのではなく、常温で材料を付着させる工法のことです。液状のアスファルト材を用い、ルーフィングを複数枚交互に陸屋根面に貼り合わせます。

長所

・トーチ工法と比べると熱の発生がないため、煙も出ず環境に優しい。

・施工中の異臭も発生しない。

短所

・トーチ工法に比べると高い接着技術が必要。

・他の工法と比べるとアスファルト防水は価格が高い。

・複雑な形状の屋根には施工ができない。

 

耐用年数について

上記3種類の中では塗膜防水は耐用年数が少なく、アスファルト防水は耐用年数が長くなっています。耐用年数と一緒に考えなければいけないのは価格の問題です。

表にしてまとめてみました。

防水の種類 耐用年数 価格
FRP防水 8~10年 普通
ウレタン塗膜防水 10~12年 普通
ゴムシート防水 10~13年 安い
塩化ビニールシート防水 10~13年 安い
アスファルト防水 10~20年 高い

※あくまで目安です

 

総じていえることは、シート防水は全体的に価格が安いが平らな部分にしか施工できないことと、塗膜防水は形にとらわれないが耐用年数が短い。アスファルト防水は耐用年数が長いが価格も高いということですね。

シーリングや塗料もそうでしたが、耐用年数が長くなると価格が高くなってしまうのですね。

 

防水工事を行う目安

塗装の時もそうでしたが、防水機能の劣化も雨風や紫外線など「外的刺激」によって防水材が傷むことが引き金となっています。耐用年数の目安はありますが、建物の置かれている環境によってかなり左右されてしまいます。また施工方法や防水素材によっても大きく変化してしまうので、一般の方には工事のタイミングが分かりにくいかもしれません。

簡単な目安としては

・屋上の床面に雑草が生えてしまった

・屋上やベランダの排水機能が衰えた

・防水シートが剥がれているのを見つけた

・屋上の床に隆起やひび割れなどの現象が見られる

このような現象が起こっている屋上は、防水工事、メンテナンス、補修のタイミングかもしれません。専門家に相談してみることをおすすめいたします。

屋上床、施工前

これは屋上の防水機能が衰え、水はけが悪くなった状態です。

また、雨漏りが発生している場合はすぐにでも防水工事が必要と言っても過言ではありません。屋上は外壁と比べると雨や紫外線と常に闘っている状態です。ゆえに劣化スピードも外壁と比べたらかなり早いです。しかし、雨漏りが起こると修繕が難しい状態になることもあるので、定期的に専門家の診断を受けましょう。

まとめ

建物が傷む最大の原因は建物の外側ではなく、隙間から浸入した雨水が内側から建物を蝕んでいくことです。躯体の鉄筋や断熱材などに水が浸入さえしなければ、建物は長持ちします。病気と同じで早期発見が建物の寿命を最大限に引き伸ばしてくれます。

上記のような現象が起こった場合、専門家に相談することをおすすめします。

 

長くなりましたが今回はここまでです。