マンションやビルのオーナー、不動産管理会社の人にとって「管理する建物の外壁改修工事をどこまで行えばよいのか?」という問題は、大きな課題でもあります。
定期的に改修工事が必要であることは知っているものの、実際にどのような工事が必要なのか、把握している人は多くありません。
そこで今回は、外壁改修工事の特徴と種類、費用相場、外壁改修工事が必要な外壁の症状について解説します。外壁改修工事について興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
1.外壁改修工事とは
外壁に使っている素材によって異なりますが、外壁の寿命は10年といわれており、築年数を重ねるごとに劣化が進みます。外壁補修とは、建物の壁を補修・修理する工事のことで、建物を長持ちさせるために必要な工事です。
外壁の見た目をきれいに補修するという目的もありますが、ひび割れから建物内部に雨水が侵入して腐敗する恐れを防ぐという役割も担っています。
さらに、安全性を保つためにも外壁改修工事による定期的なメンテナンスは必要です。修繕せずに放置しておくと、古くなったり錆ついたりした壁が剥落し、人に当たる危険性があります。住人の安全性を確保するためにも、適切な外壁改修工事を行いましょう。
2.外壁改修工事の種類
外壁改修工事には多数の種類があるため、どのような工事を行えばよいか、迷う人も多くいるでしょう。
ここでは代表的な外壁改修工事の特徴や内容、メリット・デメリットについて解説します。 また各工事の費用相場も紹介するため、外壁改修工事について具体的に知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
2-1.塗装工事
塗装工事とは、外壁の塗り替えをする工事のことです。塗装には、外壁を雨風や紫外線から守る防水機能があり、錆つきを防ぐ目的もあります。
費用相場や耐用年数は、塗装に使う塗料によって異なります。塗装の種類による耐用年数と費用相場は、以下の通りです。
塗装の種類 | 耐用年数 | 費用相場(1平方メートルあたり) |
---|---|---|
アクリル樹脂塗装 | 5~8年 | 1,400~1,600円 |
ウレタン樹脂塗装 | 7~10年 | 1,700~2,200円 |
シリコン塗装 | 10~15年 | 2,300~3,000円 |
光触媒塗料 | 15~20年 | 3,800~4,800円 |
フッ素樹脂塗装 | 15~20年 | 3,800~4,800円 |
ハイブリット塗料 | 15~20年 | 3,800~4,800円 |
アクリル樹脂は費用が安いというメリットがある反面、耐用年数が短いため、すぐに塗り替えが必要となるというデメリットがあります。光触媒塗料の費用は高くなっていますが、耐用年数が長く、防カビや防藻性に優れています。
フッ素系樹脂塗装も、耐用年数が長く、耐熱性や耐薬品性などに優れていることが特徴です。
トータルの費用目安は、工事する面積や使用する塗装によって異なりますが100万~150万円程度です。また、塗装の前にはひび割れや亀裂の下地補修工事をする必要があります。
2-2.張り替え工事
張り替え工事とは、既存の外壁をすべて新しい壁に張り替える工事のことです。ひび割れが大きくタイル補修が必要な場合や、劣化が激しく雨水の侵入があるとき、外壁がもろくなったときに行われます。
外壁の機能が復活するだけではなく、外壁の種類をモルタルからサイディング、またはタイル張り仕上げなどに変更できることが特徴です。外観の印象を大きく変えることができます。
使用する外壁材と施工面積によって異なりますが、トータルの費用目安は200万~280万円程度です。
2-3.重ね張り工事
重ね張り工事とは、カバー工法とも呼ばれるリフォーム工事の一種です。既存の外壁の上から、新しい外壁材(サイディングボード)を貼りつけることで補修を行います。
張り替え工事よりも安い費用で工事ができることが特徴です。しかし、劣化が少なく雨漏りが進行していないなどの条件を満たしている必要があります。
トータルの費用は張り替え工事に比べて安く、約180万~250万円程度です。この金額は使用する外壁材と施工面積によって異なります。
2-4.補修工事
補修工事には、外壁塗装や張り替え・重ね張り工事ように全面を工事する全面修理と、下地の部分的な補修を行う部分補修があります。
部分補修の種類には、以下のような補修方法があります。
部分補修の種類 | 工事内容 |
---|---|
ひび割れ補修工法 | クラックと呼ばれるひび割れが発生した際に、雨漏りの侵入や腐食を防ぐために行われる工事。構造躯体までひびがある場合に施工。 |
注入工事 | モルタル層の外壁が浮き上がったときに、エポキシ樹脂を空洞部分に注入する工事。 |
充填工法 | 0.5mm以上の大きなひび割れなどに、エポキシ樹脂やポリマーセメントモルタルなどを充填して行われる工事。 |
ピンネット工法 | モルタル仕上げの外壁が気温の変化によって膨張や収縮した際に、ピンとネットを使って壁の補強を行う工事。 外壁の落下を防ぐ目的(剥落防止機能)で施工。 |
いずれも外壁の剥落防止のために行われる工事です。
工法の種類によって異なりますが、費用の目安は1メートル2,000~3,000円程度となっています。
2-5.シーリング工事
シーリング工事とは、コーキング補修とも呼ばれる工事で、建物の目地や隙間を補修する工事です。
コーキングの寿命は5~10年といわれています。既存するコーキングの上から継ぎ足す打ち増しと、古いコーキング材を剥がして完全に新しいコーキングを注入する打ち替えの2種類があります。
また、補修で使われるシーリング材は以下の通りです。
シーリング材の種類 | 特徴 |
---|---|
アクリル系 | 早く乾くが、耐久性が少ないというデメリットがある。補修後にコーキング材が痩せるため、リフォームで使われることは少ない。 |
シリコン系 | 耐久性に優れ、コストパフォーマンスがよい。しかし、シリコンオイルが周囲を汚染し再塗装できないため、塗装する場合は撤去が必要となる。 |
ウレタン系 | 耐久性に優れており価格は安いが、紫外線に弱い。コンクリートの目地などに使われる。 |
ポリサルファイド系 | 耐久性が高いが、柔軟性は少ない。仕上げ材を使うと塗料が変色する可能性があるため、汚染防止処理を行わなければならない。 |
費用の目安は、打ち増しの場合が1平方メートル約500~900円、打ち替えの場合が1平方メートル約900~1,200円となっています。使用するシーリング材は、メリット・デメリットによって使い分けが必要です。
3.外壁改修工事が必要な外壁の症状
外壁に劣化の症状が現れたら、早めに改修工事をしたほうが費用を安く抑えられます。以下のような症状を確認したら、外壁改修工事を検討しましょう。
症状 | 状態 | 必要な工事 |
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カビや藻の発生 | 湿気が多く日当たりの悪い場所に発生し、外観を損ねている。 |
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チョーキング・白亜化(外壁を触ると白い粉がつく) | 紫外線や水分によって塗装された樹脂が分解されている。遮断性が低下している可能性がある。 |
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コーキングのひび割れ・痩せ | コーキングが劣化し、割れたりひび割れたりしている。雨漏りの原因となるため、補修が必要となる。 |
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外壁の反り | 防水性が著しく低下している。 |
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外壁のひび割れ | ひび割れは地震などで起こり、雨水が侵入しやすい。特に複数か所にひび割れがある場合は早めの修復が必要となる。 |
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外壁の剥がれ・浮き | 外壁の一部が剥がれ、浮き上がっている。剥落事故を引き起こす可能性があり、危険を伴う。 |
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外壁の劣化部分を放置しておくと悪化し、高額な費用が必要となるケースもあります。費用を抑えたい場合は、早めにメンテナンスをしましょう。
まとめ
建物の外壁は、年数を重ねるとともに劣化します。外壁補修工事は、外壁の機能を守り長持ちさせるために必要な工事です。劣化した外壁を放置しておくと、錆やもろくなった壁が自然落下して、住民に危険が及ぶ可能性もあります。
外壁の状態によって必要な工事が異なるため、事前のチェックが重要です。実績のある工事会社などに調査・補修を依頼することをおすすめします。
安全で快適な暮らしを守るためにも、定期的に外壁のメンテナンスを行いましょう。