マンションの大規模修繕にかかる期間は?周期と注意点も

マンションの大規模修繕は、マンションの劣化を防ぎ、価値を保ち続けるために必要な工事です。そんなマンションの大規模修繕工事について、修繕にかかる期間や周期の詳細を知っている人は少ないでしょう。 マンションの大規模修繕を適切なタイミングで行うためには、大規模修繕に関する正しい知識を身に付けておくことが大切です。

そこで今回は、「マンションの大規模修繕にかかる期間」や「大規模修繕を進めるうえでの注意点」について解説します。

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  • 1.マンション大規模修繕の周期は?

    マンション大規模修繕は、一般的に12年周期で実施されます。マンション大規模修繕が12年周期で行われる理由の1つが、建築基準法です。
    建築基準法では、タイル張りのマンションは、築10年経過後、築13年までに以下の対処を行うように定められています。

    • 外壁の全面打診調査
    • 修繕工事

    建物は築年数が経過するごとに性能が低下するため、居住者が安心して暮らし続けるためには、機能性の維持が必要不可欠です。
    管理組合の理事会や修繕委員会が中心となり、建物診断により劣化状況を把握し、必要に応じて補修工事や修繕工事を行わなければなりません。

    ここからは、マンション大規模修繕の時期を決めるポイントについて解説します。

    1-1.修繕時期を決めるポイント

    マンション大規模修繕の時期を決めるポイントは、主に2つあります。円滑に工事を行うためには、それぞれのポイントを押さえておくことが重要です。

    ●2回目以降の大規模修繕は、修繕箇所が増える

    大規模修繕の時期は、マンションの性能劣化の度合いによって異なります。基本は、12~15年に1回のサイクルで行いますが、必ずしも「12年おき・15年おき」と決まったタイミングで行う必要はありません。

    ただし、設備や共用部などによって、大規模修繕を行う目安は異なるため、工事が必要となる目安を参考に、大規模修繕のタイミングを考えましょう。
    また、2回目以降は築年数が経過する分、修繕箇所が増え工事費用も高額になりがちです。場合によっては、積立金が不足する可能性もあります。

    ●管理会社の言いなりにならない

    管理会社は、所有者や管理組合に代わって工事計画や工事会社への依頼などを行い、仲介手数料を受け取ります。中には、仲介手数料がコンスタントに入るように、大規模修繕を早めのタイミングで提案する管理会社も存在するため注意しましょう。

    管理会社の言いなりにならず、必要性を理解したうえで大規模修繕の時期を決定することが大切です。

    マンション大規模修繕の時期を検討する場合は、以下の「設備や共用部ごとの大規模修繕時期の目安」を参考にしてください。

    主な修繕箇所 修繕周期の目安
    外壁 12年
    屋根・屋上・ルーフバルコニー 12年
    鉄部(階段・バルコニーの手すりなど) 4~6年
    給水管・排水管 15~30年
    受水槽 25年
    エレベーターの取り換え 25年

    2.大規模修繕の工事内容と必要になる期間

    マンションの大規模修繕にかかる期間は、マンションの規模によって異なります。

    マンション大規模修繕の着工から工事完了までにかかる期間は、以下の通りです。

    小規模マンション
    総戸数目安 着工から工事完了までにかかる期間
    50戸未満 約2~3カ月
    中規模マンション
    総戸数目安 着工から工事完了までにかかる期間
    約50~100戸 約3~6カ月
    大規模マンション
    総戸数目安 着工から工事完了までにかかる期間
    約100戸以上 約5~8カ月

    ここからは、大規模修繕工事について、一般的な「工事内容」と「必要な期間」について、説明します。

    2-1.足場工事の届出

    マンションの大規模修繕で足場が必要な場合、労働基準監督署に「足場工事の届出」をしなければなりません。
    届出は、工事開始の30日前までに済ませておく必要があり、届出から30日が経過してようやく工事を始めることができます。
    ただし以下の場合は、「足場工事の届出」は必要ありません。

    • つり足場
    • 張り出し足場以外で、高さ10メートル未満の足場
    • 組み立てから解体まで60日未満の足場

    2-2.仮設工事・足場架設

    マンション大規模修繕では、「仮設工事・足場架設」に10日以上かかることもあります。

    仮設工事・足場架設の目安期間 工事内容
    約10~15日
    • 作業員の詰め所、資材置き場、洗い場、仮設トイレなどの設置
    • マンションを囲うように足場を設置

    「仮設工事・足場架設」にかかる期間は、工事会社の方針やマンションの規模によって異なるため、約2週間かかるとイメージしておくと良いでしょう。

    2-3.下地補修・シーリング・鉄部塗装

    外壁塗装や鉄部補修を行う前には、「下地補修・シーリング」によって施工箇所の状態を整えなければなりません。施工箇所が多くある場合は、塗装段階に至るまでに長い期間がかかります。

    下地補修・シーリングの目安期間 工事内容
    約2週間~1カ月
    • 壁のひび割れを補修、シーリング打ち替え
    • 高圧洗浄でコケや汚れを洗い流す
    • 鉄部は下地処理を施してから塗装

    2-4.防水工事・外壁塗装工事

    「防水工事・外壁塗装工事」は、何度も塗装作業を繰り返すため、他の工事内容に比べて期間が長くなりがちです。また、防水工事の方法によっても工事完了までの期間に差があります。

    防水工事・外壁塗装工事の目安期間 工事内容
    約1~3カ月
    • 塗料を塗らない部分を養生する
    • 「下塗り・中塗り・上塗り」で最低3回塗装
    • トップコートを重ね塗りすることもある

    塗装作業の進捗を把握したい場合は、「中塗り・上塗り」は塗料の色味を変えてもらうと良いでしょう。

  • 大規模修繕施工実績
  • 3.​大規模修繕を進めるうえでの注意点

    大規模修繕は、マンションの居住者にとって安全性や利便性を高める工事です。しかし、景観が損なわれたり不便を感じたりすることもあります。円滑に大規模修繕を進めるためには、以下の注意点を意識しましょう。

    ①セキュリティー対策の徹底を住民に依頼する
    大規模修繕の期間は、外部からの侵入者を防ぐために、工事業者と住民が共にセキュリティー意識を高める必要があります。また、住民や子どもが誤って工事現場に入り込むリスクも軽減できるでしょう。

    ●対策

    • 周囲を金網やフェンスで囲う
    • 開口部をしっかり施錠する
    • 戸締まりや補助錠の追加
    • 各戸ごとにカーテンなどによる目隠しを行う

    ②進捗状況や不備を随時確認する
    マンションの大規模修繕は、さまざまな理由で工期や費用に変更が生じることがあります。居住者はもちろん周辺住民からも進展状況を聞かれることもあるでしょう。工事の遅れや不備がないかどうか、随時確認することが大切です。

    ●対策

    • 工事項目や工事方法に変更があれば工期を確認する
    • 工期の遅れや不備は定期的に報告を受ける
    • 進展状況や変更箇所は住民と共有する

    ③住民に協力を呼びかける
    予定通りの期間で安全に工事を終わらせるためには、住民の協力意識が求められます。工事の妨げになる行動がある場合は、修繕期間が長くなる可能性があることを含めつつ、協力を呼びかけましょう。

    ●対策

    • 資材置き場への立ち入り禁止
    • ベランダの荷物を片付けてもらう
    • 工事用車両の通路での「雑談・子どもの遊び」を避ける

    ④工期遅延はなるべくしない
    マンションの機能性を維持するために必要な工事であると理解していても、工期延長は住民にとって不安やストレスの原因となります。悪天候など理解が得られる理由以外での工期遅延は避けましょう。

    ●対策

    • 工事中止日数を見込んで無理のない工程を組む
    • 工期に影響がある仕様変更は避ける

    以上のことに注意し、物件所有者・居住者・管理会社・工事業者が共に満足する、大規模修繕工事となるように努めましょう。

    4.まとめ

    マンションの大規模修繕を円滑に行うためには、修繕サイクルや期間だけでなく、工事内容や注意点についても理解しておく必要があります。管理会社に一任することもできますが、ベストなタイミングで大規模修繕を行うならば、所有者や管理組合側も正しい知識を身に付けておきましょう。

    2回目以降の大規模修繕では、初回に比べて費用が高くなりがちです。修繕のタイミングや大規模修繕を進めるうえでの注意点を意識しながら、適切なマンション大規模修繕を進めていきましょう。

  • 東京都千代田区の大規模修繕施工(第一茜ビル)
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