大規模修繕用語集~工事編~

こんにちは。前回は大規模修繕の用語集として、大まかな流れや契約段階で出てくる用語について解説いたしました。今回は工事の中での専門用語に焦点をあてて解説していきたいと思います。

大規模修繕用語集~工事編~

建物の構造について

躯体(くたい)

建築物の構造体のこと。床や壁、屋根など建物を支える骨組みのことです。

木造

建築工法のひとつ。材質が木材で作られた建物のこと。従来の日本の戸建住宅はほとんどが木造です。また、築年数30年以上のアパートもほとんど木造となっています。

RC造

Reinforced Concreteの略。コンクリートに鉄筋を埋め込んだ建築構造。木造などに比べて耐久や耐震、防音性に優れており、マンションなどに使われる建築方式。主に小~中規模マンションに用いられます。

SRC造

Steel Reinforced Concreteの略。鉄骨を使うことでRCよりも強度なつくりとなる。高層マンションや大規模なマンションに多く用いられる建築方式。強度が増すぶん、建築コストも高くなってしまいます。

建物の上部を支えるためのもの。床と梁に対して垂直に立てられる。建物全体を支えています。屋根や外壁などを支えているため、柱が傷むと建物は危険な状態になります。

梁(はり)

建物において屋根を支えるための大きな柱。床と水平にかけられる。梁が傷むことはほとんどありませんが、重い屋根を支えているため、傷んでしまうと危険な場所です。

 

壁について

外壁

外側の壁のことです。(⇔内壁)外壁は大規模修繕のメインで、普段雨や日差しから構造躯体を守ってくれています。外壁は素材によって耐用年数が変わってきます。

内壁

建物の内側の壁のこと。(⇔外壁)外壁と比べるとダメージの蓄積が少ないため、メンテナンスも少なくて済みます。

モルタル

外壁素材の一つ。セメントに砂と水を混ぜ、混合したペースト状の素材。かつては日本の住宅の外壁素材として幅広く用いられましたが、工程も多く、施工期間がかかります。また、火には強いですが耐久性が低く、亀裂が入りやすい特徴があります。ゆえに表面のみモルタル加工を施すのが主流でした。木造モルタル造は木造の表面にモルタルを塗装した家を指します。現在ではほとんど使われなくなってきています。

タイル外壁

タイル外壁とは、外壁にタイルを貼り付けることにより、耐火性などの機能と、高級感を持たせた外壁のことです。タイルは焼物なので火に強く、雨や日差しにも強い特徴があります。

タイル外壁

プライマー

タイルや塗料を塗る際に用いる接着剤のこと。中には鉄の錆を防ぐ効果や接着力を強化するためのものなど幅広い効果が期待できます。目的に合ったプライマーを選ぶことをおすすめします。

打診棒

タイルの浮きなどを調査する時に使う棒。この棒でタイルを叩き、音を聞き分けることによりタイルの浮きを調査します。

サイディング

外壁の素材の一つ。サイディングボードと呼ばれる板を張るようなイメージ。モルタル壁に比べて、費用が抑えられ、デザインにも幅が持てるため、現在は主流となっています。主な素材としては「木製サイディング」「金属サイディング」「樹脂サイディング」「窯業系サイディング」の4種類です。

木製サイディング

天然素材である木をベースとしているため自然であり、風合いや時間が経つと変化が起こります。しかし、木材であるため耐火性が低いという欠点もあります。

樹脂サイディング

樹脂サイディングは軽量であるため運搬や施工が容易というメリットがあります。また、金属と違って錆びることもありません。また、表面の再塗装が不要というメリットもあります。

窯業系サイディング

火に対して一番素材として強く、サイディングの中でも最もバランスの取れた外壁素材です、雨水にも強く、汚れを落としてくれる機能を持った素材など、現在でも進化し続けています。

金属サイディング

金属の中でもさらに細かく分けられます。スチール製、アルミ製、ステンレス製の3種類が主に使われます。スチール製は丈夫ですが、再塗装をしないと錆びてしまいます。アルミはやわらかく軽いため、施工しやすい素材です。ステンレス製は最高レベルの耐久性や対候性を持っています。

 

屋上・屋根について

屋上防水

大規模修繕で一番大切なのが屋上防水です。屋上は雨や日差しによる被害を一番受ける場所なので、防水機能の低下も著しく、修繕必須の場所となります。

防水層

建物において防水機能を持った素材を使用する層。防水シートなどの防水素材を中に埋め込む場合において防水機能を維持します。長尺シートなど防水機能を持たない素材で仕上げを行うときには必須の層です。

屋上床防水工事

陸屋根

凹凸がなく、平面のかたちの屋根のこと。ビルなどのように平らな傾斜のない屋根を指す。陸屋根は注意して見なければ気付かない程度の緩やかな勾配があり、雨水を側溝へと誘導し、樋へと流します。陸屋根の場合勾配屋根に比べ、高い防水性能が必要とされます。

 

勾配屋根

木造建築に見られる屋根。屋根に勾配を設けることで雨水をためない性質がある。日本の古い住宅では勾配屋根が主流となっています。勾配屋根の場合ブランコ工法での修繕は難しいとされています。

 

ルーフバルコニー

下の階の屋根の部分を使った少し広めのバルコニーのこと。区分所有者が使える場所ですが、「専有部分」ではなく「共用部分」とされています。ルーフバルコニーも大規模修繕の時に施工されます。

 

屋上防水工事について詳しい記事はこちら

 

窓・ベランダについて

窓周辺解説出窓

西洋風の建物に多く見られる建物の壁から突き出した窓のこと。張り出し窓とも言う。出窓の屋根部分も大規模修繕で修繕する場所になっています。

庇(ひさし)

庇とは、建物の開口部である窓や出入り口に設けられた日差しや雨などを防ぐための小さな屋根のこと。庇も大規模修繕で施工箇所となっています。

サッシ

窓枠のこと。少し前まではアルミで作られたアルミサッシが主流でしたが、最近では特殊な樹脂を使って保温効果のあるサッシも使われるようになってきました。大規模修繕ではサッシの周囲のシーリングを打ち替える施工を行います。

窓廻りのシール打ち替え

ガラリ

ガラリとは、主に浴室やトイレに見られる羽根板を重ねたような窓です。視線を遮断しながら換気ができるようになっている窓です。

バルコニー

一般的にバルコニーとはベランダを指します。ベランダは屋根がないものを言いますが、バルコニーは屋根付きの物を指します。ゆえにマンションのベランダは厳密に言うとバルコニーとなります。バルコニーも「共用部」にあたるため、大規模修繕の施工場所となります。

密着ウレタン防水(3層)工事後

長尺シート

防水機能を持たない仕上げに使われるシート。ベランダや通路などに使われることが多いです。最近では仕上げに長尺シートを使って欲しいという注文があるほど人気のシート。見た目に高級感を持たせることができます。

長尺シート

塗装について

塗装

建物を雨や日差しから防ぐために、塗料を塗ること。外壁だけでなく、屋根や庇などあらゆる部分に塗装を行うことで、建物の内部に雨水が侵入することを防ぎます。近年では塗料に防水性能だけでなく、遮熱効果がある塗料などもメジャーになりつつあります。

外壁の上塗り

トップコート

仕上げのこと。防水層の上に塗ったり張ったりする仕上げ材。トップコートには防水機能がないことも多いです。

爆裂

コンクリートの内部に雨水などが浸入し、中の鉄筋が錆びてしまい膨張し、表面のコンクリートを押し上げてしまう状態。内部の鉄が錆びてしまうのは、すでに水が浸透してしまった証拠なので早めに対処することが大切です。

チョーキング

塗装壁において紫外線などで経年劣化し、白い粉が出てしまう現象。表面を触ると手に白い粉がついてしまいます。チョーキングはかなり塗装面が傷んでいる状態なので、専門家に相談することをおすすめします。

剥離

コンクリートや表面のモルタル、タイルなどが劣化により剥がれてしまうこと。剥離が起こると下地が露呈するため、早めの対処が必要となります。

高圧洗浄

塗装を塗りなおす前に塗装面に付着した汚れやカビなどを高圧の水を吹き付けることで洗浄する作業。高水圧洗浄を行うことできれいな面に塗装できるため、剥がれにくく、長持ちする塗装を行うことができます。

外壁の高圧洗浄

塗装についての詳しい記事はこちら

シーリングについて

シーリングについて

シーリング

サイディングボードや躯体などの素材を接続する部分に用いる防水措置。コーキングとも言う。ゴムのような素材で水から建物を守ります。最近では周囲の素材に近い色の塗装を施すことでシーリングが目立たない技術も使われています。

コーキング

シーリングのこと。正確に言うと、シーリングのペースト状のものをコーキングと規定されています。

シーリングガン

シール材を打ち込むために使うガン。現在はカートリッジタイプが主流となっています。

目地

レンガやタイルなどを張ったりするときにできる継ぎ目のこと。建物の内部へと水が浸入してしまう可能性が一番高い場所。シーリングを打つことでそこからの雨水の浸入を防ぎます。

シーリングについての詳しい記事はこちら

階段・樋・廊下など

雨樋(あまどい)

雨を流す樋(とい)のこと。屋上に雨がたまらないように、地面や下水へと誘導する管のようなもの。中で詰まっているとうまく排水作用が働かないため、大規模修繕で点検が必要です。

雨樋の塗装中

上裏(あげうら)

上裏とは庇や階段の裏の部分です。上裏は普段はなかなか気付かない場所ですが、共用部ですので大規模修繕の施工場所のひとつです。吹き付けの塗装を上から行うことがほとんどです。目立たないですし、裏だからあまり関係ないと思われがちですが、しっかりとメンテナンスをしないと建物の寿命を早めることにつながってしまいます。

踊場

階段の途中にある平らな場所。階段の方向転換や転落の危険を避けるために作られています。

廊下・通路

マンションなどの集合住宅や、テナントビルに見られる共用部分の一つ。各部屋をつないでいる。こちらも「共用部」のため、大規模修繕での防水工事や塗装が行われます。

通路工事風景

側溝

階段や通路、バルコニーなどに設置された雨水の通り道。雨水は側溝に流れてから雨樋を経由して下水に流れる仕組みになっています。

 

随時更新していきますので、大規模修繕のインデックスとしてぜひご活用ください。